税務調査が来る確率を下げる方法教えます|KSK2やAIを意識した対応

はじめに:この記事は「誠実な納税者」のための防御策です

「税務調査が来る確率を下げる方法」と聞くと、どのような印象を持たれるでしょうか。この問いに対する答えは、おそらく二つの立場に分かれます。

一つは、申告内容に何らかの後ろめたさがあり、それを隠すための方法を探している方。もう一つは、不正の意図は全くなく、誠実に申告した結果として、税務署が「怪しい」と判断しかねない特徴に当てはまってしまったため、無用な疑いを晴らしたいと考える方です。

まず税務調査専門である当事務所として、明確に申し上げておきます。もし現在本ページを閲覧いただいている納税者様が前者に該当する場合は、大変恐れ入りますがこの記事はお役に立つことが無いと存じます。不正を隠蔽し、税務調査を確実に回避する方法というものは、この世に存在しないからです。

この記事は、後者、つまり「誠実な納税者」が、その誠実さゆえに抱える不安を解消するために執筆しています。

例えば、以下のような項目は、一般的に税務調査の対象になりやすいと言われています。

  • 売上が急激に伸びている
  • 売上の変動が大きい
  • 売上が増加した割に利益が少ない
  • 同業他社と比較して利益率が低い
  • 「少しだけ赤字」「少しだけ黒字」という状況が続いている
  • 売上高が1,000万円に僅かに届いていない

2026年9月に移行予定の国税庁の次世代システム「KSK2」や、国税庁が調査選定に活用しているAI・データ分析により、申告内容の分析は今後さらに効率化・高度化していくと考えられます。しかし、これらの特徴に当てはまるからといって、必ずしも不正が行われているわけではありません。

事業が軌道に乗り、たまたま売上が急伸しただけかもしれません。戦略的に利益率を下げ、市場シェアの拡大を優先した年だったのかもしれません。AIは、申告書に現れた数字の「異常」は検知できますが、その背景にある経営上の「正当な理由」までは判断できないのです。この点を踏まえると、申告内容の背景を事前に説明しておくことが実務上の対策になります。

AIが抽出した候補を最終的に確認するのは、税務調査官です。その調査官があなたの申告書を見たとき、AIが検出した異常値に対する合理的な説明が既に記載されていればどうでしょうか。「なるほど、こういう事情があったのか」と納得し、調査対象から外す可能性は十分に考えられます。

この記事では、そのための具体的な防御策、すなわち個人事業主であれば決算書の「本年中における特殊事情」欄、法人であれば「法人事業概況説明書」をいかに活用し、AIと調査官に「事前説明」を行うかについて、専門的な見地から詳述します。

ただし、一点だけ強い注意喚起をさせてください。これらの記述欄に事実と異なる内容を記載する行為は、単なるミスでは済まされません。意図的な「隠蔽仮装」と見なされ、最も重いペナルティである重加算税の対象となる、最悪の選択です。

誠実な申告を前提に、申告内容の背景を適切に説明することが重要です。

2026年から何が変わる?KSK2とAIによる調査選定の仕組み

「2026年から税務調査が厳しくなる」という情報を耳にし、漠然とした不安を感じている方も多いでしょう。その中心にあるのが、国税総合管理システム、通称「KSKシステム」の次世代システムである「KSK2」への移行と、国税庁が進めるAI・データ分析の活用です。

これまでの税務調査もKSKシステムを活用して行われてきましたが、2026年からの本格稼働で何が決定的に変わるのでしょうか。それは、「データの網羅性」「分析の精度」です。

KSK2では、地域や税目を越えた情報の一元的な管理や、縦割りシステムの解消が進む予定です。これにより、国税庁内の情報活用は従来より効率化されると考えられます。これにより、例えば「法人の売上は立っているのに、代表者個人の所得が不自然に低い」といった矛盾点を、より簡単に見つけ出せるようになります。

そして、この膨大なデータを分析するのがAIの役割です。AIは、主に以下の3つの視点から申告書の「異常値」を検出します。

  1. 同業他社比較:あなたの事業と同じ業種・規模の他社データと比較し、利益率や経費率が大きく乖離していないかを分析します。
  2. 過年度比較:あなたの過去数年分の申告データと比較し、売上や特定の経費項目が急増・急減していないかを分析します。
  3. 情報連携による突合:取引先から提出された支払調書や、法令に基づき収集された各種資料情報と、申告内容に食い違いがないかを分析します。

これらは、従来からベテラン調査官が経験と勘を頼りに行ってきた作業ですが、AIやデータ分析の活用により、調査対象の選定は従来より効率的かつ的確に行われるようになっています。これにより、調査官は「勘」に頼る必要がなくなり、AIが抽出した「特に疑わしいリスト」に集中して調査を行うことができるようになります。近年の公表資料では、税目や年度によって差はあるものの、AIやデータ分析を活用した効率的な調査選定により、1件当たりの追徴税額が高まっている分野もあります。

重要なのは、ただただ恐れることではありません。この仕組みを正しく理解し、「AIはどのような数字に注目するのか」を把握することです。それにより、私たちは冷静かつ的確な対策を講じることが可能になります。

AIへの「事前説明」が鍵。調査確率を下げる記述欄の活用法

AIが異常値を検出する仕組みを理解すれば、次に見えてくるのは具体的な対策です。AIはあくまで過去のデータに基づいて統計的な異常を見つけ出すだけであり、その背景にある個別の「正当な理由」を汲み取ることはできません。ここに、我々が介入できる余地があります。

AIが検出したリストを人間である調査官が精査する段階で、「この異常値には、このような合理的な理由があります」と事前に説明しておくこと。これが、無用な調査を避ける可能性を高めるための実務上の対応策の一つとなります。

そのための公式な手段として用意されているのが、確定申告書に添付する「特殊事情欄」「法人事業概況説明書」なのです。これらの欄を的確に活用することで、調査官の疑問に先回りして回答し、調査対象から外してもらえる可能性を高めることができます。

個人事業主向け:「本年中における特殊事情」欄の書き方

個人事業主の方の場合、青色申告決算書(3ページ目)や収支内訳書(2ページ目)に「本年中における特殊事情」という自由記述欄が設けられています。この欄こそ、AIへの「事前説明」を行うための最適な場所です。

例えば、以下のようなケースでは、この欄への記載を強く推奨します。

  • 売上が急増/急減したケース
    (記載例)「前期まで開発を進めていた新規サービス(〇〇)が軌道に乗り、主要取引先である株式会社△△からの受注が前年比300%となったため、売上が大幅に増加した。」
  • 原価率が大きく変動したケース
    (記載例)「主要仕入先である〇〇国の情勢不安により、原材料費が一時的に高騰。代替仕入先の確保に時間を要したため、第2四半期の原価率が例年の50%から70%に上昇した。」
  • 多額の修繕費や特別な経費が発生したケース
    (記載例)「7月の台風被害により店舗の屋根が破損し、緊急修繕工事を実施。修繕費として〇〇円を計上した。(領収書・被災状況の写真は保管済み)」

記載する際のポイントは、感情的な弁明ではなく、「いつ(When)・どこで(Where)・誰が(Who)・何を(What)・なぜ(Why)・どのように(How)」という5W1Hを意識し、具体的な取引先名や金額、客観的な事実を簡潔に記述することです。これにより、調査官は「なるほど、この数字の変動には正当な理由がある」と納得しやすくなります。

法人向け:「法人事業概況説明書」の営業成績の概要欄

法人においては、多くの企業が空欄や定型文で済ませてしまいがちな「法人事業概況説明書」が、極めて重要な役割を果たします。特に「12事業形態(2)事業内容の特異性」欄や「19当期の 営業成績の概要」欄は、AIが検出したであろう業績の異常値について、経営者の言葉で直接説明できる絶好の機会です。

例えば、AIが「売上は増加しているのに、利益率が低下している」という異常を検出したとします。この場合、以下のような説明が考えられます。

(記載例)「当期は、将来の成長に向けた先行投資の年と位置づけ、新規顧客獲得のためのWeb広告宣伝費を前期比200%増額した。また、主力製品〇〇の市場シェア拡大を目的とした戦略的な価格改定を実施。これらの施策により売上高は前年比150%を達成したが、一時的に営業利益率は低下した。」

このように、単なる数字の変動だけでなく、その背景にある経営判断や事業戦略と結びつけて説明することで、申告内容の説得力は格段に増します。税務調査官も企業の経営実態を理解しようと努めています。空欄で提出するのではなく、自社の状況を誠実に説明する姿勢が、無用な疑念を晴らす上で大きな助けとなるのです。

【重要】虚偽記載は最悪の選択。重加算税のリスクとは

ここまで「特殊事情欄」などを活用した防御策について解説してきましたが、ここで最も重要な警告をしなければなりません。それは、これらの欄に事実と異なる内容を記載する行為が、いかに危険かということです。

もし、税務署に都合の良いストーリーを創作し、虚偽の事情を記載した場合、それは単なる申告誤りでは済みません。税法上、最も悪質な行為とされる「隠蔽又は仮装」に該当し、極めて重いペナルティである「重加算税」が課される可能性が非常に高くなります。

重加算税は、本来納めるべき税額に対し、追加で35%(無申告の場合は40%)もの税率が課されるという厳しいものです。例えば、100万円の申告漏れが指摘された場合、通常の過少申告加算税であれば10万円程度の追加納税で済むかもしれませんが、重加算税が課されれば35万円ものペナルティが加わることになります。

国税庁が定める事務運営指針では、以下のような行為が「隠蔽仮装」の典型例として挙げられています。

  • 二重帳簿の作成
  • 帳簿書類の破棄や隠匿
  • 取引の事実を隠蔽するための架空契約書の作成
  • 事実と異なる内容を答弁・記載すること

「特殊事情欄」への虚偽記載は、まさにこの最後の項目に該当する、不正の意図を自ら書面で証明する行為に他なりません。調査官は、記載された内容が事実かどうかを反面調査(取引先への確認など)によって徹底的に検証します。その結果、虚偽であることが発覚すれば、もはや弁解の余地はありません。

正直に事情を説明することこそが、納税者を守る唯一の道です。もし、申告内容に不安な点がある、あるいは既に事実と異なる申告をしてしまったという場合は、決して自己判断で安易な記述をしないでください。そのような状況に陥ってしまったときこそ、専門家である税理士に相談することが、不利益を拡大させないための有効な対応となります。

まとめ|誠実な申告こそが最大の防御策です

2026年から本格化するKSK2とAIの導入は、税務調査のあり方を大きく変えます。調査はよりデータ主導型となり、経験や勘ではなく、客観的な数値に基づいて効率的に行われるようになるでしょう。

しかし、どれだけシステムが進化しても、その最終的な判断を下すのは人間である調査官です。そして、すべての事業活動が、常に過去のデータ通りの平均的な数値に収まるわけではありません。ビジネスには、予期せぬ出来事や戦略的な判断がつきものです。

本記事で解説してきたように、AIの仕組みを正しく理解し、「特殊事情欄」「法人事業概況説明書」といった公式な場を活用して、申告数値の背景にある正当な理由を誠実に説明すること。これは、AI時代における実務上有効な防御策の一つと言えます。

くれぐれも、その場しのぎで虚偽の記載をすることは避けてください。それは「隠蔽仮装」という最悪の結果を招き、重加算税という重いペナルティにつながる危険な行為です。

もし、「自分のケースでは具体的にどう書けば良いか分からない」「この記事を読む前に、すでに税務署から調査の連絡が来てしまった」といった状況で、深い不安を抱えていらっしゃるのであれば、どうか一人で悩まないでください。

税務調査は、初動対応が極めて重要です。専門家として、あなたの状況を整理し、取りうる最善の選択肢をご提案することが我々の使命です。当事務所では、そのような方々のために無料相談の機会を設けております。まずはお気軽にお問い合わせいただき、あなたの不安をお聞かせください。

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この記事の監修者

税理士 田中亨
税理士 田中亨税務調査専門税理士
プロフィール
近畿税理士会上京支部
登録番号128205
税務調査案件を全国対応している税理士
事前自主申告による税負担の軽減に全力を尽くしている
これまで多くの税務調査案件を早期解決に導いてきた

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