結論
・税務調査通知後であっても税務調査開始前に自主申告すれば重加算税、無申告重加算税を回避できる可能性があることは変わりません。
・しかしながら、場合によっては税務調査開始前に自主申告しても重加算税、無申告重加算税を回避できない可能性もある、という事例が国税不服審判所公表裁決事例で公表されました。
・ただ今回の事例は納税者が過去に反面調査を受けていたという特殊な事例となります。
・国税不服審判所は「調査」とは実地調査当日の調査のみだけでなく、実地調査日以前の机上調査も調査に含まれると述べています。
・繰り返しますが、税務調査通知後であっても税務調査開始前に自主申告すれば重加算税、無申告重加算税を回避できる可能性があることは基本であり、今回は例外もあるというお話です。
以下で詳細を解説します。
国税不服審判所公表裁決事例令和7年10月15日裁決の概要
・納税者である請求人は、給与所得による収入と紹介料収入という収入がありましたが、確定申告していませんでした。そのような状態で請求人は税務署から調査通知を受けました。
・請求人の税理士は、税務調査開始前において期限後申告を提出しました。
・しかし、その期限後申告は既に調査によって更正の予知があったものとして取り扱われました。
・今回は無申告加算税が、更正の予知前の税率であるか、更正の予知後の税率であるかの争いでしたが、もし仮にこれが重加算税賦課の争いであれば、更正の予知後として重加算税は回避できなかったと置き換えることができます。
以下での詳細な時系列を説明します。
国税不服審判所公表裁決事例令和7年10月15日裁決の時系列
・請求人は、H社に勤務し、令和元年から令和5年において、H社から給与(以下「本件給与」という。)の支払を受けていた。
・請求人は、J社に対し、顧客の紹介又は情報の提供をすることにより、令和元年から令和5年において、J社から報酬(以下「本件報酬」という。)の支払を受けていた
・請求人は令和元年から令和5年において所得税の確定申告をしなかった。
・A税務職員は令和6年5月13日に電話で事前通知及び本件報酬に係る資料を提出するように依頼した。
・A税務職員は令和6年5月14日にも電話で本件報酬に係る資料の準備状況を確認したところ、請求人は当該資料の準備ができた旨を回答した。
・L税理士は令和6年5月15日に税務代理権限書を提出した。
・L税理士は令和6年5月24日に令和元年から令和5年の期限後申告書(本件期限後申告書)を提出した。
・令和6年5月27日に実地調査が行われた。
・実地調査が行われた結果、令和6年10月29日に、本件期限後申告は調査に基づくものであり更正を予知しないものに該当しない旨の通知があった。
・請求人は取消を求めた。
以上が時系列となります。一方で今回の請求人については特殊な過去を有していました。
請求人は実は令和3年において反面調査を受けていたという特殊な過去
今回の請求人は実は、厳密には調査を受けることが全くの初めてというわけではありませんでした。
・請求人は令和3年5月21日において、当時J社の税務調査をしていたM税務職員から反面調査を受けていました。
・当該反面調査においてJ社との取引の経緯や流れをすべて話していました。
・M税務職員からの報告を受けていた税務署は、令和3年において請求人の本件報酬を把握していました。一方で請求人は反面調査を受けた令和3年時点において自主的な期限後申告することなく、請求人に対して調査が発生する令和6年まで過ごしていました。
国税不服審判所は「調査」とは実地調査当日の調査のみをさすわけではないとしています
国税不服審判所は、税務調査の定義について、以下のように述べています。「調査」とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての課税要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を含む税務調査全般を指すものと解され、いわゆる机上調査のような課税庁内部における調査をも含むものと解される。
つまり反面調査は税務調査に含まれるものと考えたほうがよいでしょう。
請求人に対する事前通知の詳細な内容
実は今回の請求人及び請求人の税理士は税務調査開始前の電話のやり取りで既に本件報酬に関する情報を伝えられていたということでした。
・A税務職員が給与のほかに何か収入があるか質問したところ、請求人は、J社から本件報酬を受け取っている旨申述した。
・A税務職員は、本件報酬に関する資料を実地調査の日までに準備するよう依頼した。
・A税務職員は、請求人の税理士へ実地調査に係る通知を行った際に、税理士に対し、令和元年から令和5年における本件給与に係る源泉徴収票及び本件報酬に関する資料を準備するよう依頼した。
まとめ
・納税者が過去に反面調査などを受けている影響で既に納税者が無申告や過少申告であることが税務署に知られている場合において、その後納税者に調査通知があった場合には、調査通知後から税務調査開始日までに自主申告しても更正の予知後として重加算税を回避できない可能性があることが判明しました。
・もっと言えば、やましいことに心当たりがある納税者に対して反面調査の通知があった場合には、反面調査通知後から反面調査開始日までに自主申告しなければ、重加算税を回避できないかもしれません。
・基本的には税務調査通知後であっても税務調査開始前に自主申告すれば重加算税、無申告重加算税を回避できる可能性があることは変わりません
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