結論
・世間やネットで言われるほど実は棚卸資産は税務調査において重要論点とはなりません。
・弊所がこれまで経験してきた税務調査案件において棚卸資産の金額が主たる論点となった税務調査は存在しません。むしろ調査官も棚卸資産をスルーする傾向にあります。
・弊所の私見ですが、期末棚卸資産金額は今期仕入の何パーセントというようなざっくりした計上でも決して違法ではないと考えます。
以下で詳細を記述します。
世間やネットで言われるほど実は棚卸資産は税務調査において重要論点とはなりません
ネット検索で「棚卸資産 税務調査」と検索すると、棚卸資産は税務調査で狙われやすい、棚卸資産は税務調査で必ずチェックされる、などの記述が目立ちます。しかし弊所がこれまで経験してきた税務調査案件において棚卸資産の金額が主たる論点となった税務調査は存在しません。むしろ調査官も棚卸資産をスルーする傾向にあります。
本当に正確な棚卸資産金額を算出するためには高度なシステムの投資が必要となります
正確な棚卸資産金額を算出することとは、すなわち正確な在庫管理を行うことになります。この在庫管理というものは実はとても難しく、多くの事業者が悩んでいる論点です。実際に在庫管理コンサルのようなサービスも存在するくらいです。
ECネットショップ事業のような在庫管理が事業に影響を及ぼすような業種の場合は在庫管理が完璧かもしれない
個人事業主が小さなECネットショップを運営されており、商品を仕入れて消費者へ販売する小売のような業態の場合はまさに在庫管理が事業に大きな影響を及ぼします。在庫切れにより販売ができない場合は「在庫無し」などの表示をしなければクレームに繋がります。このような事業者の場合は在庫管理が徹底しているわけですから、そのため棚卸金額の算出も可能かもしれません。
棚卸資産には、商品、半製品、仕掛品、材料などがある。
飲食店で考えてみましょう。例えばドリンクは、材料として仕入れた本数を数えて在庫を確認するなど一見すると簡単そうです。しかし例えば、材料として仕入れた人参が半分仕込みに使われている場合は、材料ではなく仕掛品に変わっており、これをどのように集計しようか悩むことになります。
最終仕入原価法でやれば簡単だというような意見に潜む罠
ここで、所得税法及び法人税法における棚卸資産の法定評価方法は最終仕入原価法であるという決まりがあります。ここで最終仕入原価法は、最後に仕入れた仕入単価に数量をかければ算出できるから簡単であるというような意見が散見されます。ここで最終仕入原価法の規定を見ます。
最終仕入原価法(期末棚卸資産をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、その年12月31日から最も近い日において取得したものの一単位当たりの取得価額をその一単位当たりの取得価額とする方法をいう。)
ここで、その種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、に着目します。つまり仕入れたものが100種類ある場合は、まず100種類に分けることになります。この時点ですでにかなりの手間となるでしょう。
棚卸資産金額が決まらないから期限後申告又は無申告になるなんてことは本末転倒です
以上、棚卸資産金額を正確に算出することは相当難易度が高いことをお伝えさせていただきました。ここで最も重要なのは、棚卸資産の金額は確定申告書に記載する数字のあくまで構成要素の一部分でしかないということです。棚卸資産金額が決まらないから期限後申告又は無申告になるなんてことは本末転倒でしょう。
ここで弊所が独自にお勧めしたいのが、ざっくりとした概算金額の棚卸資産を計上するという方法です。これは不正計算でも違反行為でも決してありません。納税者自身ができる限り努力した範囲内で算出した数字というのは尊重されます。
ただ一つ気がかりとしては実は、法人税における重加算税の事務運営指針において「棚卸資産の除外は隠蔽仮装に該当する」という定めがあります。一方で個人事業主における重加算税の事務運営指針においてはそのような定めがありません。しかしながら弊所のこれまでの経験において棚卸資産が原因で重加算税が賦課された経験はございません。
棚卸資産金額0円は税務署のKSK2システムやAIシステムに検知される恐れがあります。
税務署のKSK2システムやAIシステムは「異常値を検出するシステム」と言われております。ここで、棚卸資産金額が0円、というのは異常値として検知されるかもしれません。従って、ご自身の事業の実態に近い概算の棚卸資産金額を計上しておくべきと考えます。
まとめ
・本当に正確な棚卸金額の算出は難易度が高い。
・最終仕入原価法であっても難しい。
・しかし棚卸資産金額0円は税務署のKSK2システムやAIシステムに検知される恐れがあるため、自身の事業の実態に近い概算の棚卸資産金額を計上しておくべきと考えます。
この記事の監修者

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