税務署からの電話、2つの「通知」が混乱を招く
税務署から一本の電話。「税務調査に伺いたい」――。この突然の連絡に、冷静でいられる方はいらっしゃらないでしょう。特に、過去の申告について何らかのやましいことに心当たりがある場合、その不安は計り知れません。
「税務署からの電話、税務署からの連絡、税務調査の連絡」、実はこれらの法的な正式名称は、調査通知と言います。しかし、世間のみなさんは、これを事前通知と認識していたりと、正しい理解が広がっているとはいいがたい状況となります。
「調査通知」と「事前通知」。この2つの言葉の違いを正確に理解している納税者はほとんどいません。混乱したまま、相手のペースで話が進み、気づけば調査日程が確定してしまっている。これが、多くの納税者が陥る典型的なパターンです。
調査通知と事前通知の違いを知ることも重要ですが、最も重要なことをお伝えします。それは税務調査の日程を、その場で安易に決めてはなりません。実は、日程を保留することは法的に全く問題はないのです。
この記事では、なぜ税務署からの最初の電話で日程調整に応じてはいけないのか、その理由を法的な観点と実務的な観点の両面から徹底的に解説します。そして、「調査通知」と「事前通知」が同時に発生してしまう状況を避け、不利な対応を避けるための具体的な対応策を提示します。
調査通知と事前通知、似て非なる2つの連絡
まず、混乱の原因となっている2つの「通知」について、その法的な違いを正確に理解することから始めましょう。どちらも国税通則法という法律に基づいていますが、その役割と伝えられる内容は明確に区別されています。
調査通知:調査開始を告げる第一報
「調査通知」とは、税務署が納税者に対して「あなたが実地調査の選定対象となった旨」を伝える通知となります。法律上、この通知で伝えなければならない項目は以下の3つに限定されています。
- ① 実地調査を行う旨
- ② 調査の対象となる税目(例:所得税、法人税、消費税など)
- ③ 調査の対象となる期間(例:過去3年分など)
ここで最も重要な点は、「調査通知」の項目には、調査日時という項目が存在しないということです。あくまで「近いうちに調査をさせてくださいというお願い」の連絡に過ぎません。
事前通知:調査日時などを具体的に伝える連絡
一方、「事前通知」は、調査の具体的な内容を伝えるための連絡です。法律では、以下の項目などを納税者に通知することが定められています。
- ① 調査を開始する日時
- ② 調査を行う場所
- ③ 調査の目的
- ④ 調査の対象となる税目
- ⑤ 調査の対象となる期間
- ⑥ 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
- ⑦ その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
ご覧の通り、「調査通知」にはなかった「① 調査を開始する日時」が含まれています。つまり法律上の正式な手順としては、「調査通知」で調査を行う旨を伝えて、その後、納税者と日程を調整した上で、確定した日時を「事前通知」で伝える、という二段階の手続きが想定されているのです。
なぜ調査通知と事前通知は同時に発生するのか?
法律上は明確に区別されているはずの2つの通知。しかし、現実の税務調査の実務では、最初の電話でこれらが同時に行われるケースが後を絶ちません。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。当事務所では、これは調査官が主導権を握るための「作戦」であると考えています。以下で理由を考えます。
ここで調査通知が導入された背景について弊所は以下のように考えます。
現在の税制においては、「通知」の前後によって加算税賦課の有無や減額が定められております。事前通知においてはその「調査日時」が項目に存在します。「調査日時」とは調査官と納税者が合意しなければ定められないものとなります。
そうすると、「調査日時が決定しなければ事前通知が完了しない、すなわち事前通知という通知が永遠に完了しない、そのため加算税の税率が切り替わる基準点を明確にできない」ということは不都合が生じることになります。そのため日時項目を除く調査通知という通知が導入されたと解されます。
そうすると本来であれば、税務署はまず調査通知を行い、納税者に日程調整をお願いする旨を伝えて日程を調整してもらい、後日に日程を決めるとともに事前通知が行われるはずです。しかし実務上はそのように行われていません。この理由について考えます。
この理由について考えますと、まず税務調査官は税務調査件数のノルマを課されています。一方で税務調査は任意の調査であるため、納税者が日程調整に合意してくれなければ調査が開始できません。また、調査通知において日程を調整して後日税務署へ連絡する旨を伝えても、連絡しない納税者も多いと思われます。そこで税務署は、調査通知の段階で日程調整を迫り、勢いに任せて半ば強制的に日程を決めさせる傾向にあります。このような仕組みから、納税者は税務署に主導権を握られて誘導されています。したがって調査通知において納税者は、日程調整は保留すべきと考えます。
やましいことに心当たりが無い納税者は、税務調査官が提示する3週間後あたりの日程で同意しても良いかもしれません。しかし、当初申告においてやましいことに心当たりがある納税者は、税務調査前に修正申告書を作成するための時間を確保すべきです。また無申告に心当たりがある納税者も、税務調査前に期限後申告書を作成するための時間を確保すべきです。
以上より、法律上においては「調査通知」と「事前通知」は明確に異なるにも関わらず、現状の実務においては調査通知と事前通知が区別されずに同時に発生しています。その理由は、調査官が電話をかける立場であるという有利な立場を利用して誘導しているからとなります。税務調査官が初回の電話である調査通知の段階で日程調整しようとした場合は、納税者は日程を一旦保留とすることにより、調査通知と事前通知を同時に発生させないことが重要と考えます。
同時発生を避けるための基本的な対応策
では、税務署のペースに巻き込まれず、自らを守るためにはどうすればよいのでしょうか。その対応策は、驚くほどシンプルです。
税務署からの最初の電話口で、日程調整は「一旦保留する」。
これだけです。調査官から日程を打診されても、その場で即答してはいけません。「調査通知と事前通知を同時に発生させない」ための、唯一かつ最も重要な行動です。
なぜなら、この「保留」によって得られる時間が、調査開始前に自主的な修正申告や期限後申告を行うための準備期間となるからです。調査通知「後」であっても、調査により更正・決定があることを予知する前に行った修正申告(期限後申告)であれば、重加算税を回避できる可能性があります。この貴重な時間を確保するためにも、初動対応がその後の準備に大きく影響します。
電話口では、以下のように冷静に伝えましょう。
- 「顧問税理士と相談してから、こちらから折り返しご連絡いたします」
- 「現状は顧問税理士がいないため、税理士をネットで探して見つけて、こちらから電話します」
- 「スケジュールを確認する必要があるため、後ほど改めてご連絡します」
税務調査をなるべく優位に進められるかどうかについては、最初の連絡を受けた瞬間から始まっています。不安や焦りから相手の要求を安易に受け入れるのではなく、まずは一旦立ち止まり、専門家へ相談する時間を確保してください。その冷静な判断が、適切な対応につながります。
もし税務署から連絡があり、どう対応すべきか一人で悩んでいるのであれば、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。
この記事の監修者

- 税務調査専門税理士
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プロフィール
近畿税理士会上京支部
税理士登録番号128205
税務調査案件を安価で全国対応している京都の税理士
税務調査前の自主申告期限を守るため土日祝日深夜対応を行う
これまで多くの税務調査案件を早期終了に導いてきた
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