まとめ表
| 平均課税源泉徴収 個人事業税比較表 | 平均課税 | 源泉徴収 | 個人事業税 |
| 原稿料 | 対象 | 対象 | 非課税 |
| 印税 | 対象 | 対象 | 非課税 |
| 作曲報酬 | 対象 | 対象 | 非課税 |
| 著作権の使用料 | 対象 | 対象 | 非課税 |
| デザイン料 | 対象外 | 対象 | 課税 |
偶然か?漫画家・同人作家・イラストクリエーターの原稿料・印税・作曲報酬著作権の使用料は平均課税の対象かつ個人事業税非課税の対象
具体的な経費区分の方法に入る前に、まず「なぜ、この面倒な作業が必要なのか」という根本的な理由を理解することが不可欠です。
結論から言えば、所得税の「平均課税の適用を受ける」と「個人事業税非課税の適用を受ける」という、有利な税制を受けることができる可能性を高めるためです。
「平均課税の対象になる所得」と「個人事業税が非課税になる所得」は、別の制度です。しかしながら、偶然なのか必然なのか不明ですが、「漫画家・同人作家・イラストクリエーターの原稿料・印税・作曲報酬著作権の使用料は平均課税の対象かつ個人事業税非課税の対象」となっております。
したがって、平均課税の適用を受けて税制の恩恵を受けようと試みることはすなわち、個人事業税非課税提供の恩恵を受けることにも繋がります。
所得税の節税に直結する「平均課税」の変動所得とは
平均課税は、収入の変動が激しい特定の職業のために設けられた、所得税の負担を平準化する制度です。この制度の適用対象となる所得を「変動所得」と呼びます。漫画家やイラストレーターの場合、具体的に以下の収入が変動所得に該当します。
- 原稿料
- 印税(紙媒体・電子書籍を問わない)
- 著作権使用料(アニメ化、グッズ化、海外翻訳など)
これらの収入は、出版社などの事業者から「著作権」という無形の権利の対価として支払われるものです。ヒット作の有無によって金額が大きく変動する性質があるため、変動所得として認められています。
一方で、以下の収入は変動所得には該当しません。
- 同人誌の販売売上
- オリジナルグッズの販売売上
- pixivFANBOXやPatreonなどのファンコミュニティからの支援金
- イラスト制作の請負(コミッション)による収入
これらの収入は、自ら商品を制作・販売したり、役務を提供したりした対価であり、著作権の対価とは性質が異なるため、平均課税の対象外となります。まずはご自身の収入明細を確認し、どれが変動所得で、どれがそうでないかを明確に区別することが第一歩です。
個人事業税を非課税にする「事業所得」の区分
次に、都道府県が課税する個人事業税のルールです。地方税法では、事業の種類(法定業種)が70種定められており、これに該当する場合に個人事業税が課されます。
ここで重要なのは、漫画家や文筆家の活動は、この法定業種に直接は該当しないため、原則として個人事業税が非課税となる点です。具体的には、出版社から受け取る原稿料や印税といった収入は、この非課税の恩恵を受けられます。
しかし、注意が必要です。もしあなたが自費で同人誌を印刷してイベントで販売したり、BOOTHなどでグッズを販売したりする場合、その行為は法定業種である「物品販売業」や「出版業」に該当する可能性があります。この場合、その事業から得た所得に対しては個人事業税が課税されます。
つまり、同じクリエイターの活動であっても、
- 非課税となる事業:原稿執筆、著作権の許諾(=原稿料、印税収入)
- 課税対象となる事業:同人誌・グッズの制作販売(=物品販売業としての売上)
という区分が必要になるのです。この区分は、確定申告書の第二表「事業税に関する事項」で、「非課税所得など」の欄に正しく記載することで申告します。所得税だけでなく、個人事業税の観点からも、収入の正確な区分が極めて重要となります。
【実践】もう迷わない!経費区分の3ステップ徹底解説
収入の区分がなぜ重要かをご理解いただいたところで、いよいよこの記事の核となる、経費区分の具体的な実践方法を解説します。一見複雑に思える作業も、以下の3つのステップに沿って進めれば、論理的に整理しやすくなります。
重要なのは、いきなり全ての経費を按分しようとしないことです。まずは「100%どちらかの事業に属する経費」を確定させ、最後に残った「共通の経費」だけを合理的な基準で按分する。この手順を踏むことで、計算ミスを防ぎ、税務署に対しても明確に説明できる経理が完成します。
ステップ1:変動所得に直接かかる経費を抜き出す
最初に、変動所得(商業誌の原稿料や印税など)を得るためだけに使った経費を特定します。これらは「個別経費」とも呼ばれ、按分計算の必要がなく、100%変動所得から差し引くことができます。
具体的には、以下のような経費が考えられます。
- 特定の商業連載作品のための資料代(専門書、参考文献など)
- その作品を描くための取材旅行費(交通費、宿泊費)
- 商業原稿の制作を直接手伝ってもらったアシスタントへの給与や外注費
- 出版社との打ち合わせのための交通費や会議費
ポイントは「もし、この商業連載がなければ、この支出は発生しなかったか?」と自問することです。答えが「Yes」であれば、それは変動所得の個別経費です。まずは領収書や帳簿を見ながら、これらの経費をリストアップしていきましょう。
ステップ2:変動所得以外の事業にかかる経費を抜き出す
次に、ステップ1とは逆に、変動所得以外の事業(同人活動やグッズ制作など)のためだけに使った経費を特定します。これらも按分不要で、100%そちらの事業の経費として計上します。
具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 同人誌の印刷代、製本代
- 即売会へのサークル参加費、出展料
- イベント会場までの交通費、搬入搬出費用
- グッズの制作費、仕入原価
- BOOTHの倉庫利用料や匿名配送サービス料
- 同人活動の宣伝のために出稿した広告費
これらの経費は、平均課税の対象となる変動所得の計算からは完全に除外されます。同時に、個人事業税の課税対象となる所得を計算する上で差し引かれる経費となります。ステップ1と同様に、該当する経費を正確に抜き出してください。
ステップ3:共通経費を「売上比率」で合理的に按分する
ステップ1と2で分類できなかった経費、つまり「変動所得の事業」と「それ以外の事業」の両方に関わる経費が「共通経費」です。多くのクリエイターが最も頭を悩ませるのが、この共通経費の扱いです。
共通経費の例としては、以下のようなものが考えられます。
- 自宅兼作業場の家賃、水道光熱費、通信費(事業使用割合を乗じた後の金額)
- ペンタブレット、PC、作画ソフトなどの減価償却費
- 汎用的な画材費(ペン先、インク、用紙など)
- 幅広い知識を得るための書籍代やセミナー参加費
これらの共通経費を分ける際には、事業の実態に応じた合理的な基準で按分する必要があります。売上高の比率による按分は、客観的な説明がしやすい方法の一つです。
計算方法は以下の通りです。
変動所得にかかる経費 = 共通経費の合計額 × (年間の変動所得の売上 ÷ 年間の総売上)
例えば、年間の総売上が1,000万円で、そのうち変動所得(印税・原稿料)の売上が700万円だったとします。この場合、売上比率は70%です。もし年間の共通経費が100万円だった場合、そのうちの70%にあたる70万円を変動所得の経費として計上します。残りの30万円は、同人活動など他の事業の経費となります。
なぜこの方法が「合理的」とされるのか。それは、事業活動の規模や投下した労力の結果が最も客観的に表れるのが「売上」である、という考え方に基づいているからです。この基準を用いることで、「なんとなく」や「感覚」ではなく、明確な根拠を持って経費を区分することが可能になります。
税理士が見た、経費区分で注意すべきポイントと税務調査のリスク
ここまで解説してきた経費区分は、単なる計算ルールの話ではありません。税務調査の現場では、この区分が極めて重要な論点となります。
漫画家・同人作家・イラストクリエーターが平均課税を適用するため、個人事業税の非課税の適用を受けるためには、変動所得に関する売上及び経費を区分しなければなりません。なぜなら「所得」とは売上から経費を控除した金額だからです。つまり変動所得とは、変動売上から変動売上に対応する経費を引いたものになります。
なお、漫画家・同人作家・イラストクリエーターにとっての変動売上とは、印税、原稿料、著作権の使用料収入ですので、これらを区分することはまだ難易度が低いでしょう。
一方で難しいのは、漫画家・同人作家・イラストクリエーターの印税、原稿料、著作権の使用料収入を得るためにかかった経費を正確に集計しなければならない点です。印税や原稿料には紙の書籍や原稿によるものもありますが、いわゆる電子書籍を販売したことによる印税も含まれます。その制作環境が同人活動と共通している場合も多く、経費の切り分けはより複雑になります。
漫画家・同人作家・イラストクリエーターが、書籍を印刷して本を売っている場合やイベントでの同人誌販売については印税や原稿料ではありませんので、そもそも変動所得計算の対象外である点に注意が必要です。
多くの漫画家・同人作家・イラストクリエーターは、変動所得に関する売上及びそれ以外の出版売上の両方の売上があるケースが多いです。したがって、変動所得に関する売上及びそれ以外の出版売上のいずれにもかかっている経費が存在すると考えられますので、そういう場合は売上の割合で合理的に区分するしか方法がないと考えられます。この按分計算というのは国税庁や税務署が認めている方法となります。
そして、この経費区分は、税務調査の場面でさらに重要な意味を持ちます。
意図的な過少申告に心当たりがある状態で調査通知を受けた漫画家・同人作家・イラストクリエーターさんが、調査日までに事前自主修正申告書を提出する際にも平均課税を適用できる可能性があります。平均課税を適用すると実は所得税は還付となる可能性もございます。平均課税を適用するためにはすばやく売上区分及び経費区分をしながら集計しなければなりません。
無申告に心当たりがある状態で調査通知を受けた漫画家・同人作家・イラストクリエーターさんが、調査日までに事前自主期限後申告を提出する際にも平均課税を適用できる可能性があります。平均課税を適用すると実は所得税は低額に抑えることができる可能性もございます。平均課税を適用するためにはすばやく売上区分及び経費区分をしながら集計しなければなりません。
私たちは、そうした切迫した状況下でご相談に来られたクリエイターの方々のサポートを数多く経験してきました。迅速に売上と経費を正しく区分し、平均課税を適用して申告書を作成した結果、当初想定していたよりも納税額を大幅に抑えられたり、場合によっては所得税が還付になったりするケースも決して珍しくありません。
税務調査の通知は、誰にとっても大きなストレスです。しかし、そのような状況だからこそ、専門家のサポートのもとで迅速かつ正確な経費区分を行うことが、将来の税務リスクや追加負担を抑えるための有効な対応となり得ます。売上区分及び経費区分及び税務調査のことも含めて弊所にご相談いただければと存じます。
過去の申告も諦めないで!5年以内なら還付の可能性あり
この記事を読んで、「もしかして、過去の申告で平均課税を使い忘れていたかもしれない…」と不安に思った方もいらっしゃるかもしれません。特に、急にヒット作が出て収入が跳ね上がった年などは、知らずに通常の方法で申告し、本来よりも多くの税金を納めてしまっている可能性があります。
しかし、どうかご安心ください。そのような場合でも、払い過ぎた税金を取り戻せる可能性があります。
「更正の請求」という手続きを行えば、法定申告期限から5年以内の申告について、内容を見直して税金の還付を求めることができます。例えば、2023年分の確定申告(申告期限:2024年3月15日)であれば、2029年3月15日まで請求が可能です。
この手続きを行うには、過去の申告内容が誤っていたこと、そして平均課税を適用すれば納税額がもっと少なかったことを、当時の売上や経費の資料に基づいて改めて計算し、証明する必要があります。当然、本記事で解説したような正確な収入と経費の区分が求められます。
過去の資料を遡って整理し、請求書を作成するのは簡単な作業ではありません。しかし、もし還付の可能性があるのなら、挑戦してみる価値は十分にあります。ご自身での手続きに不安を感じる場合は、税理士に相談することも有効な方法です。専門家であれば、還付の可能性を的確に判断し、煩雑な手続きを代行することが可能です。
まとめ:複雑な経費区分は、専門家への相談が一番の近道
本記事では、漫画家・同人作家・イラストレーターが平均課税及び個人事業税の非課税を正しく適用するために不可欠な、経費の区分方法について詳しく解説しました。
その要点は以下の通りです。
- 所得税の「平均課税」と個人事業税の「非課税」という2つの制度のために、収入と経費の厳密な区分が必要である。
- 経費区分は「①変動所得の個別経費」「②それ以外の個別経費」「③共通経費」の3ステップで整理する。
- 最も悩ましい共通経費は、客観的で合理的な「売上比率」で按分する方法も有力な選択肢となる。
- この区分を怠ると、税務調査で指摘を受けるリスクがあり、逆に正しく行えば、調査の際にも有利に働く可能性がある。
- 過去5年以内の申告であれば、「更正の請求」によって払い過ぎた税金が戻ってくる可能性がある。
この記事を通じて、経費区分の重要性と具体的な方法はご理解いただけたかと存じます。しかし、いざご自身の多岐にわたる収入と経費を前にすると、「このケースはどちらに分類すべきか」「自分の按分計算は本当に正しいのか」といった新たな疑問や不安が生まれてくるかもしれません。
特に、税務調査のリスクを考慮すると、その判断には専門的な知見が求められます。そのような不安を抱えたまま確定申告を迎えることは、精神的な負担も大きいでしょう。
もし少しでも不安を感じるのであれば、その悩みを一人で抱え込まず、専門家である税理士に相談することをお勧めします。それは、ご自身の貴重な創作時間を守り、将来の税務リスクを回避するための、税務リスクを抑えながら対応を進めるための有効な選択肢です。
当事務所では、クリエイターの方々の税務に関するお悩みに、豊富な経験と専門知識をもって対応しております。まずは、お気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

- 税務調査専門税理士
-
プロフィール
近畿税理士会上京支部
税理士登録番号128205
税務調査案件を安価で全国対応している京都の税理士
税務調査前の自主申告期限を守るため土日祝日深夜対応を行う
これまで多くの税務調査案件を早期終了に導いてきた
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