結論
・無申告法人に対する税務調査は年間2,000件程度発生しています。
・法人は登記情報により国にその存在を把握されます。
・法人の有限責任制を利用した法人廃業による滞納税金回避スキームが存在していたと分析しました。
・令和7年1月1日以後は法人廃業による滞納税金回避スキームは穴ふさぎされたと考えます。
以下で詳細を記述します。
無申告法人に対する税務調査は年間2,000件程度発生しています
国税庁が毎年11月頃に公表する「法人税等の調査事績の概要」によれば過去10年における、無申告法人に対する実地調査の状況、は以下となります。
・26年事務年度→2,719件
・27年事務年度→2,555件
・28年事務年度→2,623件
・29年事務年度→2,593件
・30年事務年度→2,683件
・令和元年事務年度→1,962件
・2年事務年度→1,416件
・3年事務年度→1,482件
・4年事務年度→1,632件
・5年事務年度→1,773件
・6年事務年度→2,089件
このデータから毎年約2,000件程度、無申告法人に対して税務調査が発生しています。
法人は登記情報により国にその存在を把握されます
法人は設立にあたって、法人設立登記を行います。従ってその存在を国に知らせることとなります。この点が個人事業主と全く異なっています。個人事業主は、基本的に開業した場合は開業届出を提出するルールとなっておりますが、開業届出を出さない個人事業主もいます。従って、開業届出を出さなければ事業所得者にならないわけではありません。そのため、ある個人が何らかの形で事業収入を得ていたとしても申告をしないという、個人事業主の無申告は発生しやすくなるわけです。また株式会社、合同会社は、営利を目的として設立することが基本であるため、わざわざ設立したにも関わらず営利活動をしないというのもおかしな話となります。ではなぜ、法人を設立してあえて無申告であるという法人が発生するのでしょうか。
法人の有限責任制を利用した法人廃業による滞納税金回避スキームが存在していたと分析しました
まず株式会社、合同会社の有限責任制について解説します。有限責任制とは、法人の出資者はその法人が倒産した場合でも、その出資者は出資額の金額以上の金額は請求されない、という原則となります。
ここで法人の借入金で説明します。法人が借り入れた借金を返せなくなった場合でも、当該借金に対して代表者が代表者連帯保証を付けていなければ、代表者は当該借金を返さなくてもよいことになります。では、法人が税金を滞納した場合に、代表者が当該税金を納付する義務があるかどうかについて疑問が湧きます。
令和6年以前における法人が税金を滞納した場合における、代表者の第二次納税義務について、ネットでは誤った記述が散見されます。弊所の分析結果としては以下となります。
令和6年以前における法人が税金を滞納した場合の、代表者の第二次納税義務は、元代表者である清算人が、税金を滞納している法人から財産の分配を受けている場合は、分配された財産の額を限度として第二次納税義務を負う、と分析しました。反対に、元代表者である清算人が残余財産の分配を受けておらずに、その法人が税金を滞納しながら廃業した場合は、元代表者である清算人は第二次納税義務を負わないことになります。
そうすると、このスキームを利用すれば、無申告法人で得た収益を何らかの方法でどこかに隠し、無申告法人には税金を支払う財産が無いということで廃業すれば、当該無申告法人の代表者は、当該滞納税金を免れることができた、と考えられます。
令和7年1月1日以後は法人廃業による滞納税金回避スキームは穴ふさぎされたと考えます
財務省の令和6年度改正関係資料(納税環境整備関係)において、不正申告を行った株式会社の役員等に対する徴収手続の整備が説明されています。
【改正の背景】
・法人が財産を散逸させた上で廃業する等により納税義務を免れようとする事案が散見されており、調査や滞納処分を行う段階では、既にその法人の財産が残存していない場合が多く、滞納国税の徴収が困難となっており、こういった事案への対応が課題とされていた。
・従前は、代表者等が簿外財産や不正還付金といった不正行為に係る財産を創出し、自らが当該財産の移転を受けた場合や、自ら実行して法人外部へ移転(散逸)させた場合でも、代表者等に追及できなかった。
このような背景を受けて、不正行為により国税を免れた法人の財産の移転が行われており、かつその国税を滞納している場合には、その代表者に対して当該移転された財産を限度額として、第二次納税義務が課されることになりました。
まとめ
令和7年1月1日以後は「法人を潰して廃業して追徴滞納税金を免れる」は通用しません。
この記事の監修者

- 税務調査専門税理士
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プロフィール
近畿税理士会上京支部
税理士登録番号128205
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税務調査前の自主申告期限を守るため土日祝日深夜対応を行う
これまで多くの税務調査案件を早期終了に導いてきた
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