R8年に国税庁が発表した税務調査日前の帳簿提出の真意について分析しました

結論

税務調査日前の帳簿提出の真意について、税務調査当日における帳面の概要把握をスムーズにする目的が5割、帳簿資料持ち帰りの留目置きをスムーズにする目的が4割、更正の予知を発生させる目的が1割と分析しました。
以下で詳細を記述します。

全ては税務調査件数が減少していることが起因していると考えます

令和における法人の税務調査確率は約2%、個人の税務調査確率は約0.8%などと言われています。かつては、法人の税務調査確率が約8%、個人の税務調査確率が約2%、という時代もあったようです。実は平成25年以前は、事前通知の基準が明確でなかったり、無予告調査の基準が明確でなかったりと、めちゃくちゃな時代がありました。平成25年以後においては税務調査の手続きが厳格となりました。そしてSNS時代が到来し、公務員である税務調査官がもし仮に法律に沿わない調査や態度をとれば、すぐに批判される時代となりました。このようにして税務調査の件数が下がっていったため、国税は何とかして調査件数を上げるために、税務調査日前の帳簿提出を発表したと考えます。

いくら経験を積んだ税務調査官でもある納税者の帳面をすぐに理解できるわけではない

まず当該論点については、税理士事務所である弊所が税務調査官の肩を持つわけではありませんが、いくら経験を積んだ税務調査官でもある納税者の帳面を一瞬で見抜くことは不可能です。会計には簿記や仕訳などがありますが、納税者は損益を属人的、独創的に算出しているケースがあります。なぜこの数字が算出されたのか、納税者本人から聞き取らなければ理解できないわけです。そうすると、個人事業主の税務調査の1日目の6割くらいの時間が、納税者への経歴の聞取り及び帳面の聞取りで消化されてしまいます。そして本題に入るころには、残り2時間程度となり、結局調査が1日で終わらず2日や3日かかることが頻発することになります。
もし仮に、税務調査前に納税者の帳簿データを調査官が受け取っていたとしたら、当該時間を短縮できることになります。

帳簿資料持ち帰りの留目置きをスムーズにする目的

税務調査官が、税務調査の現場から納税者の帳簿資料を持ち帰ることを留目置きと呼んでいます。この留目置きの作業は、税務調査の現場において非常にもたもたします。まず調査官は、すべての資料を持ち帰るわけにはいかないため、選別することに時間がかかります。また預かると決めた資料については預かり証という書類を作成して発行します。この手順について、慣れていない新人の調査官の場合は、1時間程度かかる場合もあります。もし仮に、税務調査前に納税者の帳簿データを調査官が受け取っていたとしたら、当該時間を短縮できることになります。留目置きについてはこちらのページをご参考ください。

税務調査で資料を持ち帰られる留置きとは?返却までの期間

税務調査日前の帳簿提出で更正の予知を発生させる意図もあるかもしれません

更正の予知についてはこちらのページをご参考ください。

更正の予知とは|税務調査の理由を聞いてはいけない

重要なのは、更正の予知がある状態で自主的に申告しても重加算税回避はできない、ということです。実際に、現場における臨場調査の前に、いわゆる机上調査で既に更正の予知が発生していた、という納税者及び税理士の税務調査通知後の自主的な修正申告による重加算税回避を防がれたしまった裁決事例が存在します。

衝撃!?税務調査前の自主申告でも重加算税を回避できない場合がある!?(令和5年12月7日公表裁決)

しかしながら弊所の考えとしまして、税務調査日前の帳簿提出で更正の予知を発生させる意図については限定的であり、あくまで副産物として考えている、と分析します。

理由は、実は「税務調査日前の帳簿提出については質問検査権(税務調査)に含まれるため、R8年国税の発表以前も存在していた」ということです。つまり、「税務調査官はやろうと思えば税務調査日前の帳簿提出をいつでも要求できた」となります。しかしながら「R8年における国税庁が発表した税務調査日前の帳簿提出のお願い」についてもあくまで強制ではなく、御願い、に留めております。ここを法律改正で必須化すればよいものの、それはしていないことになります。
以上より税務調査日前の帳簿提出で更正の予知を発生させる意図は低いと考えるのが妥当します。

まとめ

税務調査日前の帳簿提出の真意について、税務調査当日における帳面の概要把握をスムーズにする目的が5割、帳簿資料持ち帰りの留目置きをスムーズにする目的が4割、更正の予知を発生させる目的が1割と分析しました。

この記事の監修者

税理士 田中亨
税理士 田中亨税務調査専門税理士
プロフィール
近畿税理士会上京支部
税理士登録番号128205
税務調査案件を安価で全国対応している京都の税理士
税務調査前の自主申告期限を守るため土日祝日深夜対応を行う
これまで多くの税務調査案件を早期終了に導いてきた

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